謹賀新年2020

明けましておめでとうございます。

旧年中は大変お世話になりました。作曲の師匠の言葉をお借りして、本年も沢山"beautiful noise"をお届け出来るように精進して参ります。今年も宜しくお願い致します。

 

因みに僕の元旦は、大晦日のパーティーでのカウントダウン時に、文字通り”Countdown"を演奏して撃沈したのが悔しくて、帰宅後(この時点で朝の7時)に起きてからずっとCountdownのコルトレーン・チェンジを練習して終わりました。笑

 

……という事で、本来ならばその年の振り返りはその年のうちに行うのが良いのでしょうが、2019年12月は見事にパリピしていたので(特に最後の1週間!)、年明けの今のこのタイミングで2019年を少し振り返り、そして2020年の抱負と展望を書いてみたいと思います。

2019年は、僕の中ではとても大事な年になりました。

 

4月にハンガリーとアメリカからそれぞれGaborとMartyを日本に呼んでSwansong Japan Tour 2019を、11月にドイツからFalkと健太郎さんと二回目の日本ツアーFalk Bonitz Trio Japan Tour2019を行い、僕自身も6月と10月にFalk Bonitz Trioのヨーロッパツアーで2度渡欧しています。

ヨーロッパ時代の気の置けない友人達を日本に連れて来て、一緒に演奏出来るようになったというのは僕のキャリアの中でも大きなステップになったと思いますし、何よりもそれを継続して続けられている、という事にとても意義を感じます。

 

僕自身の日本でのリーダープロジェクト、Noriaki Hosoya Far East Quartetも、素晴らしいメンバーに恵まれて、9月と11月にはライブレコーディングを行いましたし、10月には初めて(昼の部ですが)有名ジャズクラブ、新宿ピットインに出演させて頂きました。

ライブレコーディングに関しては、これからテイクを選んで音源化する予定です。正月休みの間にどのテイクを使うかを決めてエンジニアに渡したい所ですが……どうなるでしょう!?

 

それ以外の日本での活動に関しても、今まで継続して参加させて頂いているプロジェクトは勿論の事、特に2018〜19年にかけては同じ価値観、同じ「言語」を話している、と心から思えるような仲間にも恵まれて、特に2019年に入ってからは日本での音楽活動も一層楽しくなってきていると思います。

ヨーロッパが恋しい気持ちや、また海外(具体的にはイスラエルですが。笑)に行きたい気持ちも、ないと言えば嘘になりますが、それと同じ位に、日本で出会えた大切な人達とこれから作っていく音楽を楽しみにしています。現在、水面下で進行中のプロジェクトがいくつかありますが、どれもとても楽しみなものなので、大事に育てていきたいと思っています。

……と、半年前に比べて心境が若干変化したのは、僕の日本語のコミュニケーション能力が以前と比べて少し上がったからかも、と思ったりしています(笑)。

以前にも少し書いたかもしれませんが、僕は日本人だし、高校までは日本育ちなので、日本語が喋れて当たり前と言えば当たり前なんですけど、長いヨーロッパ生活で、コミュニケーションの言語の軸が英語とドイツ語になっていたので、2016年に帰国してから暫くは「どんな日本語を話せば良いんだっけ?」と、日本語を話している時の距離感に戸惑い、暫く日本語コミュ障(!)の時期がありました。

それがだんだんと日本語の感覚に慣れてきて、あ、ここまでならカジュアルに喋ってもいいかも、とか、このくらいまでは突っ込んでも大丈夫かも、という感覚が分かってきて、以前よりも少しずつフランクな日本語で話せるようになってきたのが、ちょうど2019年に入った辺りかもしれません。

 

これ、ホント、自分でもお前何人だよ、っていう感じだと思うし、共感して頂ける方の方が少ないと思うんですけど、偽らざる事なので、書いておきます(笑)。

 

今の所、僕がちゃんと喋れる言語は、母国語の日本語の他に英語、ドイツ語と、3つなのですが、それぞれに言語が持つ性格がだいぶ違って、僕自身の性格もその時話している言葉によって大分引っ張られる所があります。

 

日本語の時は、とにかく丁寧で柔らかい。

英語の時は、フレンドリー。

ドイツ語の時は、論理的。

 

3つの言語の中でいちばんペラペラなのは、当たり前だけど日本語なのですが、僕自身、英語で話している時の自分がいちばんいい奴という自覚がありますが(笑)。ジョークを交える「間」とかも、英語がいちばん掴みやすいのです。

ドイツ語の時も英語に近い感覚でのジョークが言えたり、時にはブラックな冗談も言えたりしながらコミュニケーションを取れるのですが、日本に帰国してからはしばらくそれが日本語で出来なかったんですよね。

帰国して4年目に入り、日本語のコミュニケーションの「間」にだんだん慣れてきたというか、こう話したら円滑な会話が進む、という事を徐々に経験して学んできたというか、何にせよ、ちょっとだけ来日4年目、みたいな感覚です(笑)。

相変わらず、英語やドイツ語を喋っている自分が好きなのですが、2019年は日本語を喋っている自分の事を前よりも少しだけ好きになれたかも。

言葉って本当に馬鹿にならないなぁ、と思うのですが、言い回しやその時の話題、同じ冗談で笑えるか、等々で、人間って自然と自分と合う人、合わない人を感覚的に分けているのかもしれません。

 

言語に関して説明しましたけど、それは音楽でも同じで、同じ「コンテンポラリー・ジャズ」と呼ばれる音楽を演奏していても、この人のフレーズやタイム感等、何かいいな、演奏している時に同じ感覚を共有出来ているな、と思えるような人とそうでない人との違いは、今自分が感じている以上に大きいものなのかもしれません。

そして、2019年は、そのように同じ感覚を共有出来ている、と心から思えるような人たちとの出会いや演奏がたくさん出来た年だったと、今振り返ってみても自信を持って言えます。

そんな感じで、この素晴らしい感覚を持ったまま、2020年は引き続き去年からのプロジェクトの発展、そしてこれから準備していくプロジェクトの打ち出し及び継続を、持続的に行っていけるように精進していきたいと思います。

 

いちベーシストとしては、もっと上手くなりたい!(Countdownがちゃんと弾けるようになりたい!笑)

もっと頼られるようになりたい!

あと、スラップをやるとモテるそうなので、今年はモテベーシストを目指したい!(去年末のセッションで意気揚々とスラップしたら、1曲だけで見事に親指にタコが出来ました。笑)

 

一人の人間としては、「人見知り」や「コミュ障」を言い訳にせずに、ちゃんとコミュニケーションを取る事を目標としたいと思います。

音楽だけでなく、全ての面において、結局は人対人ですからね。

実は、今年の誕生日を迎えると、僕の母が病でこの世を去った年齢に追いつきます。

 

当時の僕は幼かったので、ただただ悲しい、という思いしかありませんでした。しかし、実際にその時の母の年と近づいてくると(想像でしかありませんが)いかに無念だったか、いかに若くして逝ってしまったか、というのを今になって痛いくらいに思い知ります。

 

当時の母の年齢に追いつき、そして追い越すというのは僕にとっては思った以上に感慨深い事です。

一人の音楽家として、今まで特に大きな怪我や病気をする事もなく健康に生きてこれたのは、本当に恵まれた事だと思います。僕の生きる意味、音楽をする意味なんて、もう少ししないと分からないかもしれませんが、産んでくれた母、育ててくれた父に感謝しつつ、胸を張って生きていこうと思います。

 

この写真は、2019年11月のDorisとの京都でのライブパフォーマンス「DoNo」の際に撮って頂いたものです。決められた筋道のない完全なインプロヴィゼーションは、まさに僕たちアーティストの人生のようなもの。

そんなLife Pathを、音楽やそれ以外で共有出来る特別な事に改めて感謝を込めて。

改めまして、本年も皆様にとって素敵な年となりますように。今年も宜しくお願い致します。

 

2020年元旦

細谷紀彰

Noriaki Hosoya

Born in Japan, studied at Berklee College of Music Boston, U.S. and has been active in Europe, now lives in Tokyo, Japan.


Playing Jazz to Funk, Pop to Latin, elastically fit with any kind of music with keeping his identity as a bass player.


"His playing is very sophisticated; solid & tight and really melodic at the same time. He lets the bass singing"

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